結論から言うと、この物件はどう頑張っても住宅ローンの範囲では収まらない。だが、なぜ通らないのかを一つずつ見ていくと、信長という経営者の資金調達センスが逆に見えてくる。
01そもそも「住宅」なのか、という論点
まず前提として、安土城は居住スペースであると同時に、軍事拠点であり、権威を示すための「本社ビル」でもある。現代の金融機関の審査基準に当てはめるなら、これは個人の住宅ローンではなく、事業用不動産としての本社建設プロジェクトファイナンスに近い。
それでも仮に「個人の住宅」として審査に出したと想定して、話を進めてみよう。
02年収倍率で見ると、すでに黄色信号
一般的な住宅ローンの目安は「年収の5〜7倍程度」が無理のない借入額とされる。信長の推定年収を約6.2億円とすると、無理のないラインは約31億〜43億円。安土城の建築費(約48億円)は、この上限をわずかに超える水準だ。
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 天守(地上6階・地下1階/金箔瓦・障壁画含む) | 約26億円 |
| 石垣・普請(山腹の造成含む) | 約12億円 |
| 城下町インフラ(道路・堀・橋) | 約7億円 |
| 内装・意匠(狩野派障壁画等) | 約3億円 |
| 合計 | 約48億円 |
03担保評価でつまずくポイント
次に金融機関がチェックするのが担保評価だ。安土城が建つ安土山は、琵琶湖水運の要衝という点では立地評価が高い。しかし現代の再販価値という観点では、「山城・特殊建築・用途変更が極めて困難」という評価が下される可能性が高い。天守を居住用マンションに転用するリフォームは、事実上不可能だからだ。
04それでも信長なら、資金調達を通しただろう
住宅ローンという個人向けの枠組みでは分が悪い安土城プロジェクトだが、信長自身は最初から個人の借入でこれを賄うつもりなど、なかったはずだ。楽市楽座による城下町の税収増、南蛮貿易の利権、そして「天下人の居城」という広告塔としての価値――これらを合わせれば、現代で言うところの大型プロジェクトファイナンス+ブランディング投資として十分に説明がつく。
つまり信長がもし現代の銀行の窓口に来ていたら、住宅ローン担当ではなく、法人営業部の大口案件として、まったく違う稟議書が回っていただろう。
個人の住宅ローンとしては否決。法人の事業性融資としてなら、勝算あり。
年収倍率・担保流動性の両面で、個人向け住宅ローンの審査は厳しい。しかし城下町の将来収益(楽市楽座・貿易利権)を事業計画に織り込めば、事業性融資として通る目は十分にある。信長は、住宅を買った男ではなく、都市を建てた経営者だったということだ。
※本記事は史料に基づく概算をもとにした創作コンテンツです。石高換算・建築費換算は諸説あるうちの一説を採用したシミュレーションであり、実際の金融審査基準を示すものではありません。
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