片道旅費 総額(現代換算)
約4.6億円/ 加賀〜江戸間・約2,000人規模
経費精算 査定結果
一部否認/ 承認率 約71%

参勤交代は、幕府への忠誠を示す公務出張であると同時に、藩の財政を圧迫する最大の固定費でもあった。もし前田家の経理部がこれを稟議に上げていたら、何が承認され、何が突き返されていたのか。

01そもそも「出張」の目的が二重になっている

現代の出張旅費規程で最初に問われるのは「業務目的の妥当性」だ。参勤交代の目的は、将軍への謁見という公務そのものにある一方で、行列の規模や装飾は藩の格式・威信を示すための広報活動という側面も強い。経理部目線で見れば、これは「出張費」と「広告宣伝費」が一つの行列に混在している状態だ。

02費目ごとの査定結果

実際に費目を分解すると、承認できるものとできないものがはっきり分かれる。

加賀藩・参勤交代 旅費 経費精算(現代円換算・片道)
費目金額査定
宿泊費(本陣・脇本陣)約9,800万円承認
人足・駕籠かき等の人件費約1.4億円承認
飲食・酒宴等の接待費約6,200万円一部否認
装飾具・行列衣装(格式演出分)約1.1億円否認
沿道への祝儀・心付け約3,000万円一部否認
合計約4.6億円

03「装飾具・行列衣装」はなぜ否認されるのか

現代の出張旅費規程でもっとも厳しくチェックされるのが、業務遂行に直接必要のない支出だ。行列を彩る豪華な衣装や道具類は、幕府への忠誠を「見せる」ための演出であり、謁見という業務そのものには必須ではない。経理部の理屈で言えば、これは出張費ではなく販促費・広告宣伝費として別枠で計上すべき支出であり、旅費精算からは弾かれる。

謁見に槍は要らない。だが、藩の面子には要る。ここに経費と広報費の境界線がある。

04それでも藩がこの支出をやめられなかった理由

経理部的には無駄に見える「格式演出分」だが、藩にとっては他藩との比較で格下と見なされないための、いわば取引先との関係維持コストだった。参勤交代は単発の出張ではなく、毎年ないし隔年で発生する定例出張であり、一度でも見劣りする行列を出せば、藩の信用そのものに関わる。だからこそ、経理部にどれだけ渋られても、この予算だけは削れなかったのだろう。

経理部的結論 / VERDICT

宿泊・人件費は承認、格式演出分は「広報費」として別予算へ。

業務遂行に必要な移動・宿泊コストは正当な旅費として認められる一方、行列の豪華さを演出する費目は、現代なら広告宣伝費に振り替えられていたはずだ。参勤交代とは、公務出張と企業ブランディングが、帳簿の上では常にせめぎ合っていた制度だったと言える。

※本記事は史料に基づく概算をもとにした創作コンテンツです。旅費・人数・費目の換算は諸説あるうちの一説を採用したシミュレーションであり、実際の学術的な財政評価や現代の経費規程における判定を示すものではありません。

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